2ちゃんねるや5ちゃんねるをはじめとしたインターネット上の掲示板には、特定の個人や法人に対する誹謗中傷が書き込まれることも少なくありません。誹謗中傷の書き込みをされると、された側は、書き込みを見た人たちからの評判を落としたり、あらぬ疑いをかけられたりして、風評被害を受けやすくなります。 そうならないためにも、掲示板で誹謗中傷されてしまったら、早期に対処することが重要です。掲示板での誹謗中傷の書き込みは、削除してもらうほか、投稿者を特定して損害賠償を請求することも可能です。 この記事では、掲示板で誹謗中傷をされたり、風評被害を受けたりした場合の対策について、説明します。
掲示板では、個人や法人に対する誹謗中傷が書き込まれやすくなっています。
[出典]2ch
その理由の1つは、匿名性が高いこと。掲示板では、投稿にあたってアカウントの作成が必要なく、誰でも身分を隠した状態で書き込みができます。
誹謗中傷する人たちは、自分がどこの誰であるかが、相手に分からないのをいいことに、特定の個人や法人を誹謗中傷しているのです。
掲示板そのものが荒れていることも、誹謗中傷が書き込まれやすい理由の1つです。大手の掲示板では、様々なスレッドで「荒らし」行為が横行しており、なおかつそれらが放置されています。
場そのものが無秩序な状態になっているため、他人を誹謗中傷する心理的なハードルが下がりやすいのも、掲示板の問題点の1つです。
掲示板に誹謗中傷の書き込みをされると、誹謗中傷された個人や法人は、風評被害を受けやすくなります。風評被害とは、根拠のない噂によって、経済的な損失を被ることです。
掲示板で誹謗中傷されることで、企業が受けやすい風評被害には、求人応募者数の減少や、内定辞退者数の増加などが挙げられます。
転職希望者や学生のなかには、受ける会社の情報、特に労働環境を調べるのに、2ちゃんねるや5ちゃんねるをチェックする人もいます。
2ちゃんねるや5ちゃんねるの書き込みは、嘘ばかりだと思っている人も多いかもしれません。しかし、特定の企業に関するスレッドでは、その企業で働いている(または働いていた)人しか知り得ないような情報も書かれています。
そのため、掲示板は転職希望者や学生にとって、特定の企業に入社するかどうかを決めるうえで、重要な情報ツールの1つになるのです。
掲示板で、企業に対する誹謗中傷がたくさん書かれていれば、採用試験を受けるのをやめる人や、内定を辞退する人も出てきます。結果、将来有望な新卒や、即戦力の転職者を採用できなくなり、将来的な売上が下がってしまう危険があるのです。
掲示板によっては、個人が誹謗中傷や風評被害を受けることも珍しくありません。
例えば、大手掲示板の「爆サイ」では、「店名+源氏名」がスレッドタイトルとなっている、水商売や風俗店で仕事をしている個人のスレッドも立っています。個人スレッドでは、スレッドタイトルの個人に対する、誹謗中傷の書き込みも多く見られます。
[出典]爆サイ
こうした個人スレッドを見るのは、そのお店のお客さんです。そのため、誹謗中傷の書き込みをされれば、それを信じたお客さんから指名がとれなくなり、収入が減ってしまう可能性があります。
掲示板に誹謗中傷の書き込みをされてしまったら、風評被害が起きる前、あるいは、これ以上被害が拡大する前に削除してもらいましょう。誹謗中傷の投稿の削除は、掲示板の運営元に申請できます。 削除申請の方法は、掲示板によって異なります。代表的な掲示板と、それぞれの削除申請の方法を紹介しましょう。
国内最大手の匿名掲示板であった2ちゃんねる(2ch.net)は、現在は「2ちゃんねる(2ch.sc)」と「5ちゃんねる(5ch.net)」の2つに分裂しています。旧2ちゃんねるを起ち上げたひろゆき氏と、旧2ちゃんねるの管理人との間で権利関係のトラブルがあり、ひろゆき氏が旧2ちゃんねるの運営から外れたのが、分裂した理由です。
現在の2ちゃんねるは、ひろゆき氏が起ち上げた、新しい2ちゃんねるです。2ちゃんねるでは、以下の掲示板に書き込みをすることで、削除申請ができます。
[出典]2ch削除板
注意点として、削除要請板や削除整理板への書き込みは、そのスレッドで公開されます。削除申請の書き込みの際に、乱暴な言葉を使うと、逆効果になってしまう危険があるので、書き込みの内容には十分注意しましょう。
もう1つの注意点として、2ちゃんねるには「削除ガイドライン」があり、そのなかで、法人に対する書き込みは「原則放置」と名言されています。そのため、法人が2ちゃんねるに削除申請をしても、基本的に対応してもらえません。
2ちゃんねるでの誹謗中傷の書き込みを削除してもらいたい企業は、このあと紹介する「裁判所の削除命令」で削除してもらいましょう。
5ちゃんねるは、ひろゆき氏が外れたあとの旧2ちゃんねるが改称したものです。
[出典]5ch
ひろゆき氏が外れて、新しい2ちゃんねるを作ったことで、一時期は「旧2ちゃんねる(2ch.net)」と「新2ちゃんねる(2ch.sc)」の2つが同時に存在していました。しかし、ひろゆき氏が2ちゃんねるの商標権を獲得し、旧2ちゃんねるは2ちゃんねるを名乗れなくなったため、5ちゃんねるに改称しています。
5ちゃんねるは、2021年時点で、国内で最もアクセスの多い掲示板です。
5ちゃんねるでの削除申請方法は「meiyokison@5ch.net」にメールを送ることです。
メールの件名は「削除申し立て」。本文には、誹謗中傷にあたる書き込みのスレッドURLやレス番号を記載のうえ、削除を申請する理由を書きます。加えて、削除する理由の根拠となる資料や、本人確認書類の写しも添付します。
5ちゃんねるにも削除ガイドラインがありますが、内容は2ちゃんねると同じです。つまり、5ちゃんねるでも、法人は原則放置となっています。
注意点として、5ちゃんねるへの書き込みは、2ちゃんねるに自動的に転載されます。そのため、5ちゃんねるで誹謗中傷されたら、2ちゃんねるに対しても削除申請が必要です。
なお、2ちゃんねるへの書き込みは、5ちゃんねるには転載されないので、2ちゃんねるで誹謗中傷された場合は、5ちゃんねるに削除申請する必要はありません。
2ちゃんねるや5ちゃんねるで誹謗中傷された場合、「まとめサイト」にその内容が転記されている可能性があります。まとめサイトとは、2ちゃんねるや5ちゃんねるで立ったスレッドを、そのスレッドでのレスをまとめて、記事にしているサイトです。
まとめサイトに誹謗中傷の投稿が転記された場合、2ちゃんねるや5ちゃんねるで誹謗中傷の投稿を削除してもらっても、まとめサイトの記事には残り続けます。そのため、2ちゃんねるや5ちゃんねるで誹謗中傷をされたら、まとめサイトも確認しておきましょう。
まとめサイトでは、サイトのお問い合わせフォームから、運営者にメッセージを送ることで、削除の依頼ができます。
爆サイは、月間10億PV(ページビュー)を誇る、国内大手の匿名掲示板です。国内の掲示板では、アクセス数は5ちゃんねるに次ぐ2番目となっています。
爆サイでは、水商売や風俗の仕事をしている個人に対する誹謗中傷が多くなっています。爆サイで誹謗中傷された場合、以下の手順で、サイトから削除依頼が可能です。
削除依頼から、削除依頼フォームに移るには、アカウント登録とログインが必要です。削除申請が受け入れられた場合、申請から72時間を目処に削除してもらえます。
注意点として、爆サイでは、72時間以内に同じ内容の削除依頼を複数回送信することや、威圧的な削除依頼は禁じられています。これを破った場合、禁止リストに登録され、以後削除依頼ができなくなることもあるので注意しましょう。
ここまで、掲示板での削除申請方法について説明してきましたが、削除の申請をしたからといって、必ずしも対応してもらえるとは限りません。特に、2ちゃんねるや5ちゃんねるでは、法人は原則放置とされているため、削除申請を送っても、対応は期待できません。
削除申請をしたものの、対応してもらえなかった場合は、掲示板の運営に対し、裁判所に削除命令を出してもらうことで、誹謗中傷の投稿を削除してもらえます。
この場合、「仮処分」によって、削除命令を発令してもらいます。仮処分とは、裁判の前に、裁判に勝った場合と同じ状態を確保できる、暫定的な措置です。
削除命令が発令されれば、多くの場合、相手方は削除に応じます。
裁判所の削除命令は、弁護士に依頼して行うのが一般的です。掲示板に削除申請を出しても、削除してもらえない場合は、弁護士に依頼しましょう。
ただし、なかにはインターネットに疎い弁護士もいるので、ネット対策に強い弁護士事務所に相談するのがおすすめです。
掲示板では、誹謗中傷の書き込みをされても、それを書いた相手がどこの誰なのかが分かりません。
しかし、「発信者情報開示請求」を行えば、匿名掲示板に誹謗中傷の投稿をした人の特定が可能です。これは、ネット上で誹謗中傷の投稿をした人の情報について、プロバイダに開示を求める制度です。
発信者情報開示請求をすることで、投稿者の氏名や住所、電話番号などが分かります。誹謗中傷の書き込みをした人を特定すれば、損害賠償の請求が可能になります。 発信者情報開示請求の主な流れは、以下のとおりです。
注意点として、誹謗中傷の投稿から時間が経っている場合は、発信者の特定ができません。なぜなら、発信者を特定するのに必要なプロバイダのログ(通信記録)は、投稿から3~12カ月で削除されてしまうからです。
ログが削除されると、投稿者の個人情報を取得するのは、物理的に不可能になります。そのため、誹謗中傷の投稿を見つけたら、できるだけ早く請求を行うようにしましょう。
発信者情報開示請求は、削除命令よりもさらに手間がかかるので、こちらも弁護士に依頼するのがおすすめです。
法人や個人に対する掲示板での誹謗中傷は、「Google(グーグル)」や「Yahoo!(ヤフー)」などの検索結果にも表示されることがあります。この場合、検索エンジンを使って企業名などを検索した人にも、誹謗中傷の書き込みを見られてしまいます。
企業への応募や、入社の判断に際して、掲示板をチェックする人はそう多くないかもしれません。しかし、企業研究のため、検索エンジンで企業名を検索するのは、誰もが行うことです。
つまり、検索結果の上位に、掲示板での誹謗中傷の書き込みが表示されれば、より多くの人の目に触れやすくなってしまうのです。この場合、見る人が増えるぶん、風評被害が起きる確率が高くなります。
検索結果に、掲示板での誹謗中傷の書き込みが表示された場合は、風評被害対策会社に依頼するのがおすすめです。風評被害対策会社では、「逆SEO」の手法を用いて、誹謗中傷の投稿を目立たなくしてくれます。
具体的には、誹謗中傷のページより上位に表示されるサイトやページを新たに作って、誹謗中傷が書かれたページを下位に押し下げてくれるのです。検索エンジンでの表示順位は、下がれば下がるほど、人の目に触れにくくなります。
そのため、風評被害対策会社に依頼すれば、風評被害を受ける確率を低くできるのです。
ネット上の掲示板は、その匿名性の高さから、特定の企業や個人に対する、誹謗中傷の書き込みがされやすくなっています。特に企業の場合、個人より誹謗中傷や風評被害を受ける確率が高いため、注意が必要です。
また、知らないうちに誹謗中傷の書き込みをされていて、実はそのために売上が落ちていたというケースも考えられます。そのため、普段から定期的に、掲示板に誹謗中傷の書き込みがされていないか、チェックしておくといいでしょう。