最近、「Twitter(ツイッター)」「Facebook(フェイスブック)」「Instagram(インスタグラム)」などのSNSで、有名人などを対象にした誹謗中傷が深刻化しています。
この問題の背景には、SNSの持つ2つの特性があります。
1つは、特定の個人に対し、誰でも気軽にメッセージを送れるということです。
一昔前であれば、有名人に対して直接、誹謗中傷をしようとするなら、事務所に手紙を送るくらいしか方法はありませんでした。
手紙を送ったとしても、中身を事務所が確認していれば、有名人の目に入ることはないでしょう。
しかし、SNSでは、有名人に対しても、直接メッセージを送れます。
SNSで送られた誹謗中傷の言葉は、有名人本人の目に入り、心に深刻なダメージを与えます。
2020年5月には、人気リアリティ番組に出演中の女性が、多くの視聴者から誹謗中傷を受け、自ら命を絶つという痛ましい事件もありました。
SNSでの誹謗中傷が増えているもう1つの背景が、SNSの持つ匿名性です。
特に、TwitterやInstagramは匿名で登録しているユーザーが多く、実名じゃないからばれないだろうと、軽い気持ちで誹謗中傷をする人もいるのです。
SNSでの誹謗中傷は、有名人だけに起こるものではありません。
一般人でも、ふとしたことから、ネット被害やネットいじめに遭ってしまうこともあるのです。
その代表例と言えるのが、2019年8月に起きた「あおり運転殴打事件」に端を発する、ネット被害です。
この事件は、犯人の男があおり運転で後ろの車の走行を妨害して停車させた挙げ句、車から降りて、後ろの車の運転手を殴打したというものでした。
犯人の車には同乗者の女性がいて、その女性が犯人の暴行シーンを携帯電話で撮影する映像が、ニュース番組でも放送されました。
その後、この映像に映っていた女性とは全く無関係の女性が、犯人の車に同乗していた女だというデマがSNSで流されてしまったのです。
女性の顔写真や実名は、Twitterに投稿され、あっという間に拡散されてしまいました。
同時に、被害女性のTwitterやInstagramには、不特定多数の人たちから、多くの誹謗中傷コメントが送られてきました。
犯人が逮捕されたことで、被害女性の無実は証明されましたが、一般人でもSNSでのネット被害やネットいじめの対象になり得るということを象徴する出来事でした。
ここまで紹介してきたケースほど大規模ではないにしろ、個人がSNSで誹謗中傷を受けることは決して少なくありません。
SNSで誹謗中傷された際、その投稿を削除してもらうには、どうすればいいのでしょうか?
この場合、SNSの運営会社に対して、削除依頼を出しましょう。
Twitterの場合、「ツイートを報告」から、誹謗中傷の投稿に対する削除依頼が出せます。
Facebookの場合は、投稿の右上にある「...」のアイコンをクリックして「サポートを依頼または投稿を報告」から、運営に対して違反報告ができます。
Instagramの場合も、「...」のアイコンをクリックして「不適切な投稿を報告」から、違反報告が可能です。
ただし、削除依頼や違反報告をしたからといって、必ずしも投稿が削除されるわけではありません。
しばらく経っても削除してもらえない場合は、弁護士に相談しましょう。
SNSで誹謗中傷してきた相手を特定して、訴訟を起こして損害賠償を請求したいという方もいるでしょう。
その場合、基本的に以下の手順で、相手の個人情報の開示を請求することになります。
まずは、SNSの運営会社に対し、誹謗中傷した発信者の「IPアドレス」の開示請求を行います。
IPアドレスとは、インターネット上の住所のようなもの。
これが分かれば、相手が投稿時に利用したプロバイダを特定可能です。
次に、プロバイダに対して、誹謗中傷した発信者の個人情報の開示を求める裁判を起こします。
プロバイダでは、投稿があった日時に、そのIPアドレスを使っていた人のログが保持されていて、そこから契約者の情報を割り出し可能です。
裁判の結果、投稿の内容が誹謗中傷にあたると認められれば、相手の氏名や住所を開示してもらえます。
発信者の特定方法について説明しましたが、これを個人で行うのは、以下の理由から難しいと言えます。
個人での発信者の特定が難しい理由の1つ目は、法的手段を経なければ、SNSの運営会社から発信者情報を開示してもらえないケースが多いということです。
発信者情報の開示に関わる法律である「プロバイダ責任制限法」の第4条の一には、開示が請求できる条件として「権利が侵害されたことが明らかである」とあります。
しかし、具体的にどんな投稿内容であれば、権利が侵害されたことが明らかなのかについての明確な定義はありません。
そのため、運営会社は被害者の求めに対して、発信者情報を開示しなくても問題にはなりません。
反対に、開示すれば、それによって発信者から責任を追求されるリスクもあるため、安易に情報開示に応じるわけにはいかないのです。
だからこそ、運営会社にIPアドレスを開示してもらうためには、法的な手続きが必要になります。
裁判所に「仮処分(正式な裁判の前に、勝訴した場合と同様の状態を得られる暫定処置)」を出してもらえば、SNSの運営会社からIPアドレスを開示してもらえます。
この手続きは、個人でするよりも、弁護士に依頼した方が確実です。
2つ目の理由は、発信者の特定に、多大な手間がかかることです。
発信者情報の開示請求をするにあたっては、プロバイダに対して、裁判を起こさなければなりません。
裁判は個人でも起こせますが、これには大きな手間がかかります。
不特定多数の加害者を特定しようと思えば、なおさらです。
SNSでの誹謗中傷、ネットいじめやネット被害で、発信者を特定して損害賠償を請求したいなら、弁護士への依頼は必須だと言えるでしょう。
個人では難しくても、ネット上の誹謗中傷対策に強い弁護士に依頼すれば、発信者情報の開示に成功しやすくなります。
誹謗中傷対策センターでは、ネット上の誹謗中傷対策に精通した弁護士をご紹介できます。
SNSでの誹謗中傷にお悩みの方は、ぜひご相談ください。