企業やお店、個人であっても、ネット上で誹謗中傷されることは珍しくありません。誹謗中傷されてしまった場合、風評被害が起きないよう、早めの対策が肝心です。
早めの対策さえできれば、風評被害を防ぐことも可能です。この記事では、誹謗中傷を早期に発見し、風評被害を未然に防ぐ対策、誹謗中傷が起きてしまった場合の事後対策について、説明します。
誹謗中傷や風評被害という言葉を使っている人でも、実はこれらの正確な意味を知らないという人は少なくありません。そこで、まずはこれらの正確な意味について説明します。
誹謗中傷とは、根拠のない悪口を言うなどして、相手の名誉を貶める行為を指します。誹謗と中傷は、本来は別々の言葉で、誹謗は悪口を言うこと、中傷は根拠のないことで相手の名誉を貶めることを意味します。
「ばか」「あほ」などの悪口は、相手の名誉を貶めていないため、誹謗中傷にはあたりません。
誹謗中傷にあたるのは、悪口を言われた人の、社会的な評価や信用が下がるような内容です。例えば、「あの女は援助交際をしている」「あの会社の社長は不倫をしている」などは、その人の評価や信用を下げるものなので、誹謗中傷にあたります。
風評被害とは、根拠のない噂により、噂を流された人が経済的な損失を被ることを指します。 誹謗中傷されると、風評被害は起きやすくなります。
なぜなら、企業やお店が誹謗中傷によって名誉を貶められ、その内容が広がると、売上が下がる可能性があるからです。例えば、「あの会社は反社会組織との付き合いがある」などと誹謗中傷をされたら、消費者はその会社から商品を買わなくなり、取引先も契約を解除する可能性があります。
このように、誹謗中傷されると、企業は風評被害を受けやすくなるのです。
誰でも気軽にインターネット上で発信ができるようになった現代においては、ネット上のあちこちで、個人や企業の誹謗中傷ができるようになってしまいました。誹謗中傷が起こりやすい、代表的なものを挙げていきましょう。
2ちゃんねるや5ちゃんねるをはじめとした匿名掲示板には、個人や企業に対する誹謗中傷が投稿されることも少なくありません。匿名掲示板では、投稿にアカウント等が必要なく、匿名性が高いことから、投稿内容も過激なものになりがちです。
2ちゃんねるでは「削除要請板」や「削除整理板」に書き込みすることで、5ちゃんねるでは運営にメールを送ることで、誹謗中傷の投稿に対する削除申請が可能です。ただし、削除申請をしたからといって、必ずしも投稿を削除してもらえるわけではありません。
2ちゃんねるや5ちゃんねるには「削除ガイドライン」があり、要件を満たすものでなければ、誹謗中傷の投稿であっても削除してもらえません。
さらに厄介なことに、2ちゃんねるや5ちゃんねるでは、法人や団体、公的機関についての投稿は、「原則放置」となっています。そのため、法人がふつうに削除申請をしても、対応は期待できません。
TwitterをはじめとしたSNSも、個人や企業に対する誹謗中傷が投稿されやすいサービスです。匿名掲示板と違って、投稿にはアカウントの作成が必要ですが、実名登録が基本のFacebookを除けば、匿名性は高くなっています。
誹謗中傷された場合における、SNSの厄介なところは、投稿が拡散できてしまうことです。自分や自社に対する誹謗中傷の投稿があったとき、その投稿が不特定多数の人たちの手によって拡散されてしまえば、さらに多くの人たちの目に触れてしまいます。
結果、瞬く間に炎上してしまい、思わぬ損害を被ることもあるのです。
SNSでの誹謗中傷は、各サービスの運営に違反報告をすることで、削除申請ができます。
個人ブログのなかには、特定の企業を誹謗中傷しているものもあります。運営者は、その企業の元社員、または現社員で、企業に対する恨みや不満から、こうしたブログを書いているケースがあります。
このケースでの問題点の1つは、運営者が外部にもらしてはいけない企業の内部情報まで、ブログに書く危険があることです。誹謗中傷だけでなく、情報漏えいまであれば、取引先が離れていく危険が一層高くなります。
ブログでの誹謗中傷に対しては、ブログサービスの運営会社に削除の申請をするか、ブログのお問い合わせから運営者本人にメッセージを送って、削除するように依頼しましょう。削除してもらえない場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。
商品の購入やサービスの契約、行くお店の決定など、消費者がお金を支払う対象を決める際には、口コミが参考にされるようになりました。現在では、ネット上に、様々な業種の口コミ投稿サイトが存在しています。
口コミ投稿サイトは、実際にそのお店に行ったり、サービスを受けたりした人なら誰でも投稿できて、そこでされた投稿は、日本中の誰でも閲覧可能です。こうしたサイトで誹謗中傷の投稿をされてしまうと、それを信じたユーザーたちから、サービスを利用してもらえなくなってしまいます。
また、消費者としてではなく、現社員や元社員が、企業の労働環境についての口コミを投稿できる、転職口コミサイトもあります。こうしたサイトで、誹謗中傷の投稿をされれば、求人応募者数の減少や、内定辞退者の増加にもつながりかねません。
口コミ投稿サイトでの誹謗中傷の投稿に対しては、サイトの運営会社に削除申請ができます。ただし、運営会社によっては、削除申請を出しても、ほとんど受け付けてくれないところもあります。
この場合も、弁護士に相談するといいでしょう。
GoogleやYahoo!などの検索エンジンで検索すると、検索結果のページに「サジェストキーワード」が表示されます。サジェストとは、あるキーワードで検索したときに、そのキーワードと一緒に検索されやすいキーワードを予測変換して、提案する機能です。
例えば、Googleで「犬」と検索すると、「品種」「カフェ」「種類」「熱中症」などのサジェストキーワードが表示されます。
[出典]Google
サジェストキーワードがどう決まるかは検索エンジンにもよりますが、Yahoo!の場合は、これまでに検索された複合キーワードの累積で決まります。「犬」のサジェストキーワードが「人気」なら、「犬 人気」と検索した人が多かったということです。
ここで問題なのが、企業名やお店の名前と一緒に、不適切なサジェストキーワードが表示されるケースです。会社名で検索したときに「ブラック」や「パワハラ」といったサジェストキーワードが表示されれば、その企業を受けようとしていた人たちから、受けるのをやめようと思われてしまいます。
また、サジェストに「詐欺」というキーワードが表示されれば、その企業と契約しようとする人も減ってしまいます。
企業やお店にとって、サジェストキーワードはクリーンでなければなりません。サジェストから不適切なキーワードを取り除く、サジェストキーワード対策については、風評被害対策会社が得意としています。
誹謗中傷を未然に防ぐことはできませんが、誹謗中傷による風評被害なら、未然に防ぐことは可能です。
そのためには、ネット上の誹謗中傷の早期発見と、早期解決が大切です。解決が早ければ早いほど、その後に起こり得る風評被害を防げる可能性が高くなります。
反対に、対処が遅れると、誹謗中傷の内容がどんどん広がり、以下のような被害を受ける可能性があります。
そうならないためにも、誹謗中傷の早期発見と、早期解決に努めましょう。
誹謗中傷による風評被害を未然に防ぐための対策は、個人や自社でできるものから、風評被害対策会社で対処できるもの、弁護士でなければ対処が難しいものなど、様々です。それぞれができる、未然に防ぐ対策と、事後の対策について、説明していきましょう。
個人や自社でできる、誹謗中傷による風評被害の対策には、以下のものがあります。
ネット上の投稿チェックは、検索エンジンや各種SNS、匿名掲示板や口コミ投稿サイトなどで、エゴサーチ(企業名やお店の名前で検索)することでできます。定期的にエゴサーチをして、自社に関する投稿をチェックすることで、誹謗中傷されてしまった際に、早期の対処が可能です。
誹謗中傷の投稿をされてしまった場合は、投稿されたサイトやサービスの運営会社に削除申請をしましょう。サイトやサービスによっては、比較的簡単に、削除申請に応じてくれるところもあります。
誹謗中傷の投稿で、問題が大きくなってしまった場合は、プレスリリースを出しましょう。プレスリリースで、誹謗中傷の内容は虚偽であることを正式に発表することで、あらぬ疑いをかけられずに済みます。
個人や自社だけでは対処しきれないと感じたら、風評被害対策会社が頼りになります。風評被害対策会社では、主に以下の対策で、誹謗中傷を早期発見したり、風評被害を未然に防いだりしてくれます。
ネット上の投稿チェックは個人や自社でもできますが、定期的に様々なサイトをチェックするのには、たいへんな手間がかかります。この作業は、風評被害対策会社に依頼することで、代行してもらえます。
誹謗中傷の投稿が見つかった場合は、それを目立たなくしてくれるのも、風評被害対策会社に依頼するメリットです。
企業やお店の名前で検索したとき、検索結果の1ページ目に、企業やお店に対する誹謗中傷が書かれたページがあると、多くの人の目に触れてしまうため、風評被害が起きやすくなります。
このような場合、風評被害対策会社では、主に「逆SEO」の手法を使って、問題のあるサイトを2ページ目以降に追いやってくれます。
「SEO」は「検索エンジン最適化」のことで、特定のキーワードで検索したときに、特定のサイトやページが検索結果の上位に表示されるようにするためのものです。
逆SEOは、検索結果の1ページ目に誹謗中傷のサイトやページがあるキーワードで、それらより上位に新たなサイトやページを表示させることで、問題のあるサイト等の順位を押し下げる対策方法です。
また、風評被害対策会社なら、検索エンジンのサジェストから、不適切なキーワードを消すための対策もできます。
誹謗中傷や風評被害を未然に防げなかった場合の事後対策としては、弁護士への依頼がおすすめです。弁護士に依頼すれば、以下の対策が可能です。
ネット上に誹謗中傷の投稿をされて、運営元に削除申請をしても削除してもらえなかった場合は、弁護士の出番です。
運営元に対応してもらえなかった場合でも、投稿が名誉毀損にあたるものなら、裁判所に削除命令を出してもらうことで、削除してもらえます。
誹謗中傷の投稿をした発信者も、裁判を通じて特定できます。
発信者が分かれば、損害賠償の請求も可能です。
これらはいずれも、弁護士に依頼して行うのが一般的です。
ただし、一口に弁護士といっても、事務所によって何を得意としているかは異なります。なかには、ネット関連に疎い弁護士もいるので、依頼するなら、ネット被害に強い弁護士事務所を選ぶようにしましょう。
誹謗中傷の投稿は、放っておくとどんどん広がり、風評被害につながる確率も高くなります。そうならないためにも、自社に対する誹謗中傷は早期に発見し、早期に対処することで、風評被害を未然に防ぐようにしましょう。
そのためにも、この記事で紹介した対策を、ぜひ積極的に活用してください。